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パンダの食費と映画館

映画を中心に、好きなことについて書いていきます。

シェフ(行きて帰りし物語)

映画

いやー。いい話だった。

 


映画『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』 予告編 2015年2月28日(土)公開

 

シェフと奥さんは離婚してるんだけど、可愛い10歳くらいの息子がシェフと一緒にマイアミからロスまで屋台をやりながら旅する話。

 

見てて思ったのは、この子はとっても賢いし、お父さんがシェフだから、自然と料理に親しむようになるだろうってこと。

 

そして思い出したのが、最近読んだ村上龍の『盾-シールド』という絵本。

 

これを読んで僕は、人間には自分の大事な部分を守るためのシールドが必要だということに気づいた。

 

シールドとは何か。

 

それは、不良少年が、ボクシングという「自分のシールド」を持つことで、敢えて不良的な態度を取る必要など無いということに気づくことだったり、大企業の社員が、組織の看板を「自分のシールド」と勘違いして、リストラとともにアイデンティティーを揺るがされることだったりする。

 

 

シールド(盾)

シールド(盾)

 

 

映画『シェフ-三ツ星フードトラック始めました』に戻るけど、僕はお父さんと一緒に屋台をやりながら旅するこの子を見て、最初羨ましいと思った。

 

だってこんなお父さんがいたら料理という最強の「シールド」を、物心つく過程で自然と自分のものにできる。

 

そして何の変哲も無いサラリーマン家庭に育った自分は、なんの「シールド」も得られなかったんだ、思った。

 

そして父と同じ大企業のサラリーマンになって10年が過ぎ、こうしてうつ病を患って人生に迷っている。

 

でも、待てよ?

 

本当にそうなのか?

 

サラリーマンという安定した生き方にたどりつくことは、誰にでもできることなのか?

 

そうじゃない。

 

いろいろな意見はあるだろうけれども、小学校・中学校・高校・大学を、いやだな〜と思いながら、勉強から一応逃げなかったこと、そしてちゃんと大学を卒業して、安定した企業に入ったこと、それは本当に誰にでもできることなのか?

 

誰でも「いい子」になれるのか?

それは結構難しいことなんじゃないだろうか。

「普通」なんて言葉は、いろんな捉え方があるけど、「普通」で、誰からも気にされないような人間になって生きていくためには、それだけで相応の努力が必要なんじゃないだろうか。

 

もしかして僕は、そういう「サラリーマンのふつうの生き方」という「シールド」を父から、母から受け継いだんじゃないのか?

 

それは今の時代にあって、本当に目に見えにくい、透明で、薄い膜のような、硬くて柔らかい「シールド」だ。

 

この軽くて重たい盾を、捨てたとして、生身の僕に何ができるだろう。

僕は自分の血と肉にもっと近い「シールド」を持っているだろうか。

 

ふー。

 

話が逸れたけれど、それにしてもこの映画はいい気分転換になった。

キューバ音楽もキューバ料理も味わって見たくなった。

マイアミからキューバはたった150キロの海を隔てているだけなのだということもわかった。

 

そういえば、村上龍は一時期キューバ音楽に親しんでいたようだ。

ブエナ・ビスタ・ソシアルクラブ』という映画とそのサントラを知ったのは、村上龍著作からだったような気がする。

 

 

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村上龍の描いているものには、『長崎オランダ村』もそうだし、その他のエッセイ集で触れられているキューバ的なものに関する言及もそうだけれど、一貫している何かがあってすごく惹かれるのだけれど、それがなんだったのか、言語化することはひどく難しい。

 

たぶん今の自分の生活が、あまりにもそれらとかけ離れ過ぎていて、言語が血肉化しないんだろう。

 

日本の東北の片田舎から、ラテン系の南国を夢見ているような感じ。

 

とりとめのない話になった。

 

この映画も、少年は、父と旅に出るけれども、学校の待っている日常に帰ってくる。

 

いわゆる「行きて帰りし物語」だ。

 

指輪物語』とか『千と千尋の神隠し』とか、優れた物語が内包しているというあれだ。

 

 

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そういえば僕も、さっきまで日本の鬱々としたいつもの部屋で、12月の夕暮れを眺めていたのだけれど、この映画と一緒に一瞬南国マイアミに旅して、そして、戻ってきてこの文章を書いている。

 

もしかしたら、これも「行きて帰りし物語」なのかも知れない。